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写真家 板垣真理子 の楽しい 日記 です


by afrimari
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「メイプルソープとコレクター」 カエターノへの手紙・・・長いです

連休中は一日がとっても長かった。世の中が休んでいるとこんなものかなぁって思う。
今日はあまりにもいい天気だから家でPCに向かっているのが惜しくて、砧公園の緑の中で。能率上がりました。酸素が多いと脳も活性化するの?

ひとつはまだまだ続く企画書。ふぅ~ ! そして ! もうひとつはカエターノへの手紙。うふふふファンレターではないのよ。でも心は100%の100倍くらいファンですが。Mちゃんがブラジルにメールしてくれるというので、こんなお手紙が書けただけでも幸せニャン !

夜。ドキュ映画「メープルソープとコレクター」渋谷のライズXで。
中盤までが特に、かなり、面白かった。メープルソープ、好きな写真家です。日本人は彼の作品にかなり寛大なのでは? アメリカのほうががんがん非難された気がします。日本にはある程度ステータスができてから入ってきたせいなのか? 日本の人は有名なものが好きだからか? それとも「性的」なものに対してもともと寛大な国民なのか、そのあたりは今ひとつ、私がここで言えるものでもなさそうですが。ま、浮世絵もしっかり存在している国ですからねぇ。

とにかく。
この映画は後半、コレクター、つまりサム・ワグスタッフというコレクターなしに、メープルソープの存在そのものがなかったほどの人物だったのに、それ忘れちゃったらまずいんじゃないの? という思いでできた映画なのだ、と理解し始めた。

なので、メープルソープそのものよりも、サムに比重が大きいし、二人の関係もそんなにそんなに詳しく語られているわけではない。メープルソープの写真もいっぱい出てくるわけではなくて、同じものが繰り返されたりする。そのへんで食い足りない思いはするけれど、なにより、天国へ行ってしまっている彼らの自らの語りと・・・二人ともいい声しているけど、どちらがセクシーかといえば、メープルソープ・・・彼らを知る人の証言でつづられている、その「言葉」がすごいのです。たいていの映画だったら、これは、と思える言葉や台詞がいくつかあって印象に残るものなのだけど、これは次から次に出てきて、追いつかないほど。ニューヨークなんだなぁっ、と思った。ダイヤモンド口いっぱいに詰め込まれたみたいで、飲みこむ暇ありません。それが醍醐味ではあるのですけど。たぶん、もう一度観る。じゃないとどうにも納得しきれない。

おかげで、かなにか、メープルソープに対するイメージがちょっと変わってしまいました。そうだったのね、という。

サムという存在が、25歳以上の年齢を超えて結びつき、「与えることのできる喜びを覚えさせてくれる相手」としてメープルソープを選んだ。吸い込む相手は一方的にもらうだけではなく、相手の生活態度や生きる形を変えてしまうほどに影響を与えた。つまり、愛。

そんな関係だったんだね。
軽々と三角関係のままに生きてきたパティ・スミス。ひとり堂々とエイズにもかからず生き残り、嬉しそうに自作の詩まで披露して無邪気ににっこり笑う姿は、あなたは魔女 !

女って強いのね。男は生きながら死に向かっていくけど、女は死に向かいながら、しっかり生きていく。誰もが死に向かって生きているのだけれど。

その上で、もう一度、メープルソープの写真の数々(書棚のどこかにど分厚い写真集があるけど出せません、今)を思い出してみる。人生の奇跡みたいなキラリンと輝くいくつかの写真。写真が生まれる瞬間は奇跡以外のなにものでもないな。本人が意図するもの以上の、誰かが影響を与えることもあり、時間と空間と被写体が見方する瞬間。

また、観る、きっと。
しかし、サムは「すこぶる」付の美男。二人ともダンディで、もちろんゲイで。サムは超がつくほどの金持ちでいっぽうメープルソープは・・・人生は、人は神秘に満ちている。

今日、一つ気がついたこと。ヨーロッパで、またアメリカで、とてつもない金持ちがコレクターになるけど、あれは階級社会の産物だったんだね。
日本に写真がなかなかしっかりアートして存在しにくい、大枚をはたくコレクターがいないのはそのせいもあったのです。

サムは後に、恐ろしいほどの値をつけて買った写真の膨大なコレクションを売り払い、銀製品のコレクションを始める。皆は驚く、不可解だという。でも、写真の、あのモノクロの輝きの中にはたっぷりの銀が含まれていたんだよ。彼は結局直感的に同じものをコレクトしていたのじゃない? なぜ皆、それに気がつかないんだろう? 天才でしかも目が回るほどの金持ちだったらそのくらいのことはしそうだわ。彼は同じ輝きに反応し、のめりこんでいたの。

彼が写真をコレクトし始め、どんどん高い値段をつけはじめた頃、誰も写真の価値を知らなかった。
彼が銀製品を集め始めた頃、誰も銀の価値を知らなかった。
アバンギャルド、開拓者、好きです。今でこそ認められている「素人写真」にも彼は早くから目をつけていたし。写真の本質。

一方、メープルソープは死の間際になって、訪ねてきた友人に「君が撮りたい・・・君が撮りたい・・・」と訴えたと。友人は「ああ、ぜひ撮ってくれ」といいながら彼が撮り終わる前に死なないでくれと、祈ったという。
この話、好きだな。写真家の病。いや死の病ではなく、「撮りたい、撮りたい」という。今自分が心惹かれるものを「写真としてコネクトし、コレクトし」たいのだ。
つまり、二人は、違う方法をとった、コレクターだった。

この続きは、もう一度観てから・・・終わりそうにないので。
by afrimari | 2009-05-10 23:35